2016/05/21
blank0308
2016/01/16 更新
伝統ある教会の礼拝堂にありそうなアンティーク・ステンドグラス。こうしたアンティーク・ステンドグラスをモチーフにした様々なインテリアもあります。灯りとの組み合わせで様々な表情を見せてくれるアンティークなステンドグラス。その魅力に迫ります。
[表示する]
まずはステンドグラスの歴史からご案内しましょう。ステンドグラスはヨーロッパで生まれ、キリスト教の教会の窓を飾る教会美術として始まりました。時代背景や技術的な進歩により表現方法も変わってきましたが、今も進化し続けています。
フランス・ストラスブール大聖堂 (Cathédrale Notre-Dame de Strasbourg) のステンドグラス
破損せずに現存する一番古いアンティーク・ステンドグラスは、フランス・ストラスブルグにあるルーヴル・ノートルダム博物館所蔵のステンドグラスです。これは1060年ごろの作品と言われています。ステンドグラスとは、宗教建築の中の要素のひとつです。文字の読めなかった貧しい人々にも「教え」を絵で説く目的がありました。鮮やかでわかりやすい光の芸術は、人々の心に神々しくメッセージを伝えたことでしょう。
シャルトルノートルダム大聖堂のステンドグラス
その後アンティーク・ステンドグラスはゴシック建築とともに発展し、装飾的意味合いが強くなっていきます。13世紀のステンドグラスでは、『シャルトルブルー』として知られるシャルトルのノートルダム大聖堂のアンティーク・ステンドグラスが有名です。パリ郊外バジリク・サン・ドゥニ大修道院長シュジェールの命によりゴシックの時代のステンドグラスの制作が始まったと言われています。荘厳で神々しいですね。
プラハ城 聖ヴィート大聖堂 ミュシャのステンドグラス
大聖堂やステンドグラス、フレスコ等の修復が始まった19世紀。ラファエル前派 、アール・ヌーボーなど多様な芸術スタイルがステンドグラスに影響してデザインに広がりが見られるようになりました。画像は、かのアルフォンス・ミュシャのステンドグラス。1931年の作品です。大聖堂の内部は、天井の高さ34メートル、幅60メートル、奥行き124メートルの大空間。そこにあるステンドグラスは言葉を失うほどの美しさです。
マスジェデ・ナスィーロル・モスクのステンドグラス
ここまではキリスト教に関連した歴史的なステンドグラスをご紹介しましたが、これはイランにあるイスラム教のモスク。朝日だけが差し込むようになってるこのステンドグラス。、緻密に織り込まれたペルシャ絨毯のに、ステンドグラスの光が落ち、それぞれの模様が呼応しあっている様子は息を飲むほど美しく見えます。
湯河原駅改札近くの和風ステンドグラス
日本における有名なステンドグラス作家のひとりが、湯河原で暮らしていたルイ・フランセン氏(故人)です。画像の、湯河原駅のステンドグラスもフランセン氏が原画を描きました。フランセン氏はベルギー出身で57年前に宣教師として来日し、体得していたステンドグラス制作の技術を生かして、教会の壁画などを手掛けました。
学校、図書館、公会堂、銀行、デパート、病院、駅舎、温泉施設、旅館、教会、寺院、納骨堂、商店、喫茶店、個人邸など、実にさまざまな所に嵌入されています。純然たる日本家屋(書院造り)に素晴らしい作品が残されている例もあります。
もともとは宗教的な意味合いが強かったアンティーク・ステンドグラスですが、日本でも欧米の影響を受けた建築物にはふんだんに取り入れられてきました。生活の中にとけこみ、見落としてしまいがちですが、よく建物を観察しますと、非常に繊細で興味深いステンドグラスを見つけることができます。
国会議事堂内のステンドグラス。
国会議事堂は謎の多い建物です。外から見ると4階建てかな?と思う程度なのですが、実際にエレベータに乗りこみますと表示階数が7階まであることに驚かされます。中央塔の上にはかつてダンスホールもありました。そんな神秘的なl国会議事堂にぴったりなのがこのステンドグラスです。
長崎 大浦天主堂のステンドグラス
1879年の改築のときに作られた大浦天主堂のステンドグラス。とてもシンプルながら、可愛らしい印象です。1945年に原爆の爆風で一部が割れたため、のちに修復されました。また、1990年に発生した台風のときにも修理が行われています。歴史を見てきたステンドグラスということになりますね。アンティーク・ステンドグラスは全く同じものを作ることができないため、まさに修復された一枚一枚がその時代の証となるのです。
彫刻の森美術館の「ステンドグラスの塔」
箱根彫刻の森美術館の「ステンドグラスの塔」。文字通り円筒形の塔で、中央にある螺旋階段を使って鑑賞します。360度色鮮やかなステンドグラスを楽しむことができます。もし外から見たとしても、内側から漏れてくる華やかな色の数々を楽しむこともできます。
東京駅構内のステンドグラス
東京駅構内、京葉線への乗り換え通路からホームに向かうところにある大きなステンドグラス。昭和47(1972)年に鉄道100年記念事業として設置されたもので、日本画家の福沢一郎が描いた原画「天地創造」を、大伴二三彌がステンドグラスにしました。我が国で最初に公共施設に設置されたステンドグラスで、幅が9メートル、高さは5メートルもあり、世界で5番目の大きさを誇ります。「どこかで見たことがある」と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。実はこのステンドグラス、かつては丸の内側中央通路を横須賀線、総武線快速の地下ホームへ降りる大階段にあって親しまれていました。東京駅赤レンガ駅舎の復元工事に伴い、現在の場所に移設されたのです。
歴史ある内外の建物のアンティーク・ステンドグラスをご紹介してまいりましたが、ここからはあなたのお部屋にも持ち込み、楽しむことのできるステンドグラス・グッズの数々をご紹介します。
ステンドグラスを使ったランプ
手軽に生活の中に取り入れることのできるアンティークなステンドグラス・グッズが、こうした電気スタンドです。光を灯すものだけに、灯りをつけたとたん、手元を照らすばかりではなく、アンティーク・ステンドグラスを通過した色とりどりの光が、お部屋の壁や天井に美しい模様を描きます。こちらは赤い花をモチーフにしたアンティーク・ステンドグラス。可愛らしいですね。
ジョージ・パン氏のスタンド
世界的に著名なステンドグラス・ファブリルガラス作家、George Peng(ジョージ・パン)さんの電気スタンド。決して華美ではありませんが、大人っぽく、まとまった色彩を表現しています。傘のかたちも個性的なリリ―シェイドです。
リチャード・リーの作品たち
リチャード・リーは1973年から10年間、アメリカのポール・クリストで、ティファニーランプについての知識や勉強をして学びました。その後、ドイツでインテリアの開発会社を設立しました。そこで研究をした結果、ステンドグラスを作ることに成功し製作するようになりました。これらは那須ステンドグラス美術館に展示されたものです。
和風のステンドグラス「夏のころ・朝顔」
こちらは和室にも合いそうなステンドグラスです。落ち着きがあり、新品ですがアンティークな雰囲気もありますね。自然光の下ではもっとカラフルですので、窓辺に置いても楽しめそうです。アンティークといいますと、骨とう品のようなものかと思われそうですが、ステンドグラスの世界でアンティークと言えば「手吹きで制作するステンドグラス」を指します。アンティーク・ステンドグラスを通して景色を見ますと、少し歪んで見えますが、これこそが「手吹きガラス」の特徴であり、魅力なのです。
ステンドグラスで作った小さな町
ヨーロッパの小さな町を思い起こさせる立体的なステンドグラス作品。これはスタンドではなくて置物です。置き物ですが、ドアや窓もしっかりついていて、今にも誰かが顔を出しそうです。
キャンドルも入れられる食器
ステンドグラスを使った小物。ペアで欲しいところですね。夫婦茶碗のようにも見えますが、中にあるのは飲物ではありません。ローソクを灯す台とでもいいましょうか。「夫婦茶碗のように仲睦まじくいたい」などの想いを尊重しているよいにも見えてきます。
各家庭のドアや窓などにステンドグラスを使った例がこちらです。窓は一般にガラス面が広く、それだけにダイナミックな作品を取り入れることができます。またステンドグラスを通して部屋の中に美しい模様が生まれるのも特長です。
部屋の窓をアンティーク・ステンドグラスに
グッズだけではなく、家のドアや窓にもアンティーク・ステンドグラスは使えます。家や家族の雰囲気に合うよう、様々なバリエーションをつけられるのも楽しいところです。何も複雑な模様ではなくても、このようにシンプルで、十分に可愛らしくできるのです。
障子や襖にも合うアンティーク・ステンドグラス
これは和風のアンティーク・ステンドグラス。不思議に似合っていますね。こうした窓やドアにアンティーク・ステンドグラスを施してくれる業者も多数ありますので相談してみるとよいでしょう。大規模なリフォームではなくても、窓のをアンティーク・ステンドグラスに交換するだけで、かなり雰囲気が変わる筈です。
ステンドグラスに囲まれたリビング
「(株)ステンドグラスバロック」の作品。さいたまにある1975年創業の歴史あるお店です。大宮の西部図書館をはじめ、函館の聖マリア教会、新幹線軽井沢駅、神戸空港など数多く手がけています。どちらかというと繊細にデザインされた絵画のような作風が特徴です。
ここでは趣味としてのステンドグラス制作をご紹介します。比較的少ない材料で制作可能ですのでお試しになってみてはいかがでしょうか。
ステンドグラス教室で自分だけのアンティーク・ステンドグラスを
こちらは鎌倉にあるステンドグラス教室さんの作品「ウェルカムボード」。鎌倉の景色によく馴染んでいますね。自分好みのアンティーク・ステンドグラス作りにトライできる教室は全国各地にあります。良い趣味としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
個人制作のアンティーク・ステンドグラスなどを販売するサイトも
ハンドメイドの作品を作りやすいのもアンティークなステンドグラスの特徴です。実は100円均一店などで売っているガラス絵具を使えば、おどろくほど簡単にアンティーク・ステンドグラス(風)の作品ができあがるのです。そうなってくるとたくさんのかたに見ていただきたいという気持ちが起きるもの。それぞれの作ったアンティーク・ステンドグラスを販売できるサイトも存在しています。アンティーク・ステンドグラス仲間をひろげるきっかけになるかもしれません。
前述したように、もともとは文字の読めない人々にキリストの教えを伝えようとしたのが教会のステンドグラスでした。それだけにステンドグラスは、人の心の奥にまで届く、光の芸術だと言えるでしょう。ステンドグラスは。住まいの一部として、またインテリアとしても、あなたの生活をより良いものに変えてくれるに違いありません。
この記事に関する記事
キーワードから記事を探す
Copyright© 運営事務局